東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

現地会議

第5回 現地会議 in 宮城

震災も1年8カ月が経過し、宮城県内で活動する団体を県外から支援している企業や助成団体、あるいはボランティアの活動状況も変化してきました。これら外部支援者とどのように向き合い、彼らの持つ活動のための資源をどのように活用するのか―――。宮城県では通算5回目となる本会は、変化してきた活動資源の上手な活用方法にフォーカスし、今後の支援活動のためのヒントを探っていきました。
登壇者の主な発言 資料等 開催概要

登壇者の主な発言

【開会あいさつ】

大久保朝江 氏(NPO法人 杜の伝言板ゆるる)

復興における問題や課題は、震災前からあった問題や課題へと徐々に移行しつつある。また、本来の専門性を活かして活動する団体も増える傾向にある。団体の組織基盤を視点して考えると、団体の会計の在り方や、税制優遇が受けられる団体への移行など、今はチャンスだとも感じている。

福田信章 氏(JCN世話団体・東京災害ボランティアネットワーク)

先日、お世話になっていた仮設住宅の副会長さんが病気で亡くなられた。仮設住宅の住民のために奔走し、支援団体も頼りにしていた方だった。せっかく津波から助かった命なのに、亡くなられたことはとても悲しく、その体調の変化に気付けなかったのかという気持ちを強く持っている。今後、行政、企業、様々な方々と協力し知恵を出し合いながら、被災された方々の良き友人として近くにいれるように知恵をしぼっていきたいと思っている。

【テーマ1】「学ぶ」-活動資源を引き出すコツ-

田尻佳史 氏(認定NPO法人 日本NPOセンター)

助成や企業支援が受けにくくなる中で、安定してNPOを運営するための財源の在り方を見直していきたい。NP0の財源には4つの特徴がある(内発的、外発的、支援性、対価性)。また、その財源の構成として、会費、寄付・助成、自主事業、受託事業がある。最も安定した財源は会費で、ボランティアなどに関わってくれた人たちの気持ちが団体に繋がっている今はチャンスかもしれない。助成金・補助金は、単価は大きいが来年はもらえないかもしれないという不安定さがある。グッズ販売などの自主事業は比較的安定しており、委託事業は政権や外部的要素により無くなってしまう可能性があるので不安定と言える。イベント、人件費、事務所家賃・運営費、新規プロジェクト、物品購入など、団体にとって「どの経費が必要」で、「どこにアプローチすべきか」を考え、去年の状況とも合わせながら、自分達の今の位置や課題、今後の目標や課題を団体スタッフ全員で共有し合うことも必要。助成申請は自己資金づくりを念頭におきながらおこなうことが重要。是非、皆さんの活動テーマに当った助成金リストをつくり、助成制度の主体者からの情報収集を続け、継続的な活動に繋げていただきたい。

長沢恵美子 氏(一般社団法人 経団連事業サービス)

経団連で実施した「2011年度社会貢献活動実績調査結果」によると、2012年度以降に震災関連の支援活動を実施中もしくは実施を予定している企業は約300社。長期支援を目的に基金を設立・拡充予定する予定の企業は36社で、その総額は約437億円になる。また、2011年11月までに被災地に入った企業社員は約18万人と多い。これら社員の大半は30代、40代の人たちが中心で、社内での影響力、ネットワーク力、企画力を持っていることが特徴。企業は現場のニーズの把握を不得手にしている。一方のNPOは現場の情報は持っているがリソースが不足している。両者の連携の有効性、必要性は高い。マルチステークホルダーアプローチ(同じ問題を解決に関心を持つ様々なセクターの関係者との協働)が極めて大切だと思われる。連携の際に企業が重視することは、「基本方針・重点分野の一致」「運営の透明性」「ミッションに対する共感」。これらに加え企業とつながる際に最も重要なポイントは、企業にとってのステークホルダー(顧客・消費者)に対し、納得と共感を得られる「ストーリー性」があること。そしてそれらを可視化することである。

西田紫郎 氏(復興庁)

寄付や会費であれば説明責任がないかと言うと、それは間違いである。助成金や補助金においては、説明責任を果たさなければ、会費、寄付などの継続性・安定性のある資金の確保は難しいと感じている。すべての資金に対して説明責任は必要である。「新しい公共」事業が平成24年度で終わってしまうのは、NPOとの協働の成果が充分に見せられなかったことも要因のひとつと言える。補助とは、行政ができないきめ細かな支援を民間に委託すること(お金を託している)。その場合、行政自身が実施者に代わって国民や国会、財務省に対し説明責任を負うため、NPOは、その素晴らしい活動をもっと数値化、定量化して、活動効果を「見える化」してほしい。そうすれば、補助金なども提供しやすく、将来的に予算化もしやすくなる。また、行政の支援事業の多くは「等」などの表現で、例外、柔軟性を担保しているので、NPOの活動内容・分野が、補助金などの申請要項に合うよう工夫して被災地の復興のために有効活用して欲しい。

【テーマ2】「知る」-活動資源を活用するヒント-

立岡学 氏(一般社団法人 パーソナルサポートセンター)

行政と協働するためには「政策提言(課題の数字化)」「事業協定(信頼関係、経営の安定)」「支援現場(経費削減、課題発掘)」3つのステージのバランスが不可欠。NPOの「熱い思い」を持ちながらも、行政との対立姿勢からの脱却が必要である。行政は縦割りであるという事情を意識しつつ、国、県、市町村との信頼関係を保つことも重要。自治体も財政的には厳しいので、民間のお金を活用して市民サービスを高めることが必要だと思う。市の担当者との元々の信頼関係も迅速な連携の鍵である。

渡辺日出夫 氏(NPO法人 ADRA Japan)

主役はあくまでも「被災地の住民や組織」であって、NGO・NPOは「黒子であり、脇役」に徹する姿勢が必要である。自立を阻害するおそれのあることについては支援を差し控えてもよい。支援の引き際と、地元へのバトンタッチを念頭に置いた活動継続が重要である。山元町では、「山元町応急仮設住宅等連絡会」(副町長、民生委員協議会、地域包括センター、警察、消防、仮設住宅住民代表などで構成)を月一回開催しており、その中で山元町方式の仮設支援体制(仮設住宅支援活動ルール、仮設住宅有償支援ガイドラインなど)を構築。2012年4月から社協へのノウハウの移転を開始し、同年9月から町社の正規職員をセンターに置き、生活支援相談員のとりまとめ役を担ってもらう体制を確立した。ADRAとしては2013年4月に運営支援も一歩後退し、地元の人たちでまわせるセンターにしたいと願っている。

家田えり子 氏(株式会社 資生堂)

資生堂の社章である椿と、椿をシンボルとしている被災市町村とを結び付けて復興支援ができないかと考えていた。そんな時、日本経団連の長沢さん、日本フィランソロピー協会様からのご紹介で「椿でまちを復興させていきたい」と考える大船渡の団体と出会うことができた。大船渡市の椿に携わる全関係者にお会いし、住民の方々と一緒に合意形成を図りながら、資生堂がおこなっている「未来椿プロジェクト」の一環として「椿の里・大船渡」プロジェクトを開始した。今回つながることができたのは、地元NPOコーディネーターの存在が大きかった。困難だったことは、住民の皆さんがそれぞれ異なる意見、アイデアを持っており、それらを集約すること。今後、椿会議と題し、若い世代を巻き込んだ交流・教育活動も展開していきたい。また、大船渡市、住民の協働事業「いのちの椿プロジェクト」(椿を軸に大船渡市の街の再生を実現する)とも連携をし、観光の活性化、地域産業としての確立、雇用創出を目指している。10年をかけて椿と大船渡の中学生の思いの両方を育て残していきたい。

【閉会あいさつ】

栗田暢之(JCN)

現地会議の意義を唱えた時に、各被災地に様々な課題がある中、それらを自分達だけで解決していくことは難しく、他の人たちと悲しみ苦しみを分かち合い、課題を共有し話し合う場が必要。JCNとしてはこういった場をつくっていくことが役割だと思っている。また、岩手、福島を含めた被災3県全体に共通した問題を話し合う場も設けていきたい。ただ、JCNだけで開催するというよりは、本日の共催相手である「みやぎ連携復興センター」と今後も協働しながら開催していきたい。その「みやぎ連携復興センター」が事務局をつとめ運営している「復興みやぎネットワーク会議」という県域の震災支援に関わる組織が月一回集まっている会議がある。そこにしっかりと地元の課題があがり、一つでも多くの課題が解決していくことが現地の役割だと思っている。その役割をJCNとしても今後、支え続けていきたい。

資料等

開催概要

タイトル 支援を継続するためのコツとヒント
日時 2012年12月04日(火)13:00 - 17:00(240分)
会場 エル・パーク仙台・ギャラリーホール
(宮城県仙台市青葉区一番町4丁目11-1)
プログラム
【開会あいさつ】
大久保朝江 氏(NPO法人 杜の伝言板ゆるる)
福田信章 氏(東京災害ボランティアネットワーク)
【テーマ1】「学ぶ」-活動資源を引き出すコツ-
[発表者]
田尻佳史 氏(認定NPO法人 日本NPOセンター)
長沢恵美子 氏(一般社団法人 経団連事業サービス)
西田紫郎 氏(復興庁)
[進行]
尾上昌毅 氏(NPO法人 日本ファシリテーション協会)
【テーマ2】「知る」-活動資源を活用するヒント-
[パネリスト]
立岡学 氏(一般社団法人 パーソナルサポートセンター)
渡辺日出夫 氏(NPO法人 ADRA Japan)
渡邊智恵子 氏(株式会社 アバンティ)
家田えり子 氏(株式会社 資生堂)
[コーディネーター]
栗田暢之(JCN)
【閉会あいさつ】
栗田暢之(JCN)
主催 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)
協力 みやぎ連携復興センター
NPO法人 日本ファシリテーション協会
NPO法人 メディアージ
参加者数 130名