東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

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【レポート】原子力災害から地域コミュニティ再生を目指す

訪問先:ふくしまファーマーズマーケット「ここふく」実行委員会
訪問日:2014年6月20日
取材者:鈴木亮

お世話になっています。福島担当・鈴木亮です。
東北の復興に取り組んでいる活動団体の動向を紹介する「レポート」コーナー、福島県の第三弾では、福島市に2014年夏に誕生した「ふくしまファーマーズマーケット『ここふく』」を紹介します。福島市のNPO法人ライフエイドが事務局を務め、実行委員会形式で企画を進めていますが、今回は生産者の想いにフォーカスして取材しました。

―― Q.取り組んでいる地域課題は?

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東日本大震災による原子力災害・放射能汚染によって分断された地域コミュニティの再生の現場では、震災から3年3か月を経た現在も厳しい状況が続いている。福島県の農業生産者は、検出限界値(N.D.)5~20Bq/kgレベルで放射能測定を続けている。個々の地域、個々の生産者や加工業者・飲食店の課題に対しては、行政をはじめ支援の輪が少なからず届いているが、先の見えない放射能汚染に対し「作って測り続けるしかない」状況と、「現場の努力が正しく伝わらない事による、県民の意欲をくじく放射能議論」の存在が、生産者と消費者の溝を深くし、再生の意欲を損なっている。

例えば、二本松市東和地区にあるNPO法人「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」では、震災後、「里山再生・災害復興プログラム」を策定し、新潟大学、横浜大学、茨城大学、東京農工大学などの協力のもと、森林の再生、田畑の放射能移行低減、農作物ゼロベクレル(N.D.5Bq/kg以下)目標に取り組んできた。これらを可能にしているのは、震災前から「君の自立、ぼくの自立がふくしまの自立」をコンセプトに、地域の課題に向き合い、地域コミュニケーションを密にとってきたことによるところが大きい。震災後も「孫に食べさせてやれる農産物を取り戻したい」という強い願いを根底に、農家・家族・消費者の安全・安心による地域コミュニケーションの復活に取り組んできたおかげと言える。NPO法人「福島県有機農業ネットワーク」は、このような二本松市をはじめとする生産者による放射能測定と地域コミュニケーションの実践を広く県内、県外、海外へ発信し、篤農有機農家の連携を強めてきた。東京都世田谷区にはアンテナショップ「ふくしまオルガン堂 下北沢」を開店し、販売・交流・発信の拠点として機能している。このような生産者の取り組みを伝える「顔と顔の見える対話の場」は、福島県内にこそ、まだまだ必要とされる現状がある。

―― Q.どのような取り組みをされているのですか?

福島県有機農業ネットワークが2013年11月に開催した「ふくしまオーガニックフェスタ2013」は、県内外から来場者3,000人を集客した。2014年9月14日には、実施体制をより若手に移譲しての第二回開催を予定している。さらに福島市において、生産者の努力を直接伝えられる、より定期的な農家市の普及を目的に、「ふくしまファーマーズマーケットここふく」を準備中である。第一回は7月20日を予定。第二回を9月28日頃に予定している。生産者、加工業者、飲食店、NPOが力を合わせて、放射能汚染によって分断された福島市周辺の生産者と消費者の地域コミュニケーションの再生を目指す。(出店要綱より「たとえ今は福島県産品を買えない消費者であっても生産者と消費者が対話をして、お互いを知って、繋がって、信頼関係を築いた上での将来的な消費活動と選択の自由に裏打ちされた、これからの地産地消というものの在り方を、東日本大震災を経験した私たちが、全国へと発信するマーケットを目指します。そしてイベントを通じて出店者同士・出店者と地域・消費者と地域が「ここで繋がる」ことを目的として開催致します。」)

―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?

福島市の飲食店経営者で作る「NPO法人福島ライフエイド」が事務局を担い、10名ほどの実行委員会形式で運営している。出店者は20団体ほど。中合百貨店、福島市商店街が協力。(助成:ふくしまの恵みPR支援事業)

―― Q.困っていることはありますか?

震災から3年3か月がたち、放射能汚染に対する生産者の測定の取り組みについて、依然として根強い偏見が存在する一方、「寝た子を起こしたくない」という風潮も広がっている。消費者だけでなく、生産者の中にも、放射能汚染については触れたくない、という意見は多い。しかし、沈黙していては何も解決しない。コミュニケーションの取り方に、ますます工夫が求められている。

―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?

情報発信支援、およびノベルティ制作/CM制作:農家市を定期開催していくため、シリーズ的な情報発信に力を入れたい。放射能測定という専門性が求められるコンテンツを発信するための知見を持つメディアの協力を得たい。また、来場者とのコミュニケーションを促進するための、面白味のあるノベルティ(買い物袋等)やCM制作に力を入れたい。

社内研修ツアー/社員ボランティア:農家市に企業ボランティアとして若者ボランティアと共に参加し、農家と交流する。特に県内で復興支援に取り組む企業に、少数からでもご参加いただきたい。放射能測定の現場、地域再生の生の声に触れる事で、福島県の「ふるさとを愛する気持ち」を共有する機会に触れていただきたい。

<了>


【関連情報】
(URL)ふくしまファーマーズマーケット ここふく http://f-lifeaid.org/kokofuku/
(URL)ふくしまオーガニックフェスタ http://fukushima-organicfes.net/
【問い合わせ先】
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2014年7月17日 09:19